2011,07,29, Friday
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第8回(第8章)プリント基板の製造と検査 今号のポイント ☆基板製造に投入される指示情報とは何か? ☆基板製造から検査までの工程を紹介 1:プリント基板製造に投入される指示情報 これまでに紹介しましたが、プリント基板製造工程への指示情報は、回路設計者がアートワーク設計者へ指示した内容を基に、アートワーク設計者が作成します。大袈裟かもしれませんが、回路設計者の指示もしくはアートワーク設計者の指示が間違っていれば、間違ったプリント基板が製造されてしまうことになります。短時間で済むことですので、アートワーク設計者が作成した指示内容を回路設計者も念のために、自分の指示した内容と同じかなどを確認されることをお奨めします。物を作ってからの不具合はお互いに時間とお金の浪費になります。 では、どの情報に確認すべき内容があるのかを、個別に解説して行きます。 1)プリント基板製造用データ プリント基板を製造するために必要なデータには、ドリルデータ(NCデータ)とガーバーデータの2種類があります。回路設計者が製造データそのものを確認する必要はありません。また基板工場やアートワーク設計会社では、リピート発注の有無に関係なく一定期間データ保管します。ただ自分が設計したものであり、最新版管理を社内でされるケースも増えてきておりますので、アートワーク設計者から製造データを納品させることもあります。 ガーバーデータとは、ガーバーフォーマットと呼ばれるEIA RS-274-Dのプロットデータフォーマットで、エッチング前のフィルム描画時に使うプリント基板製造特有のデータフォーマットで、RS-274D(標準ガーバー)とRS-274X(拡張ガーバー)の2種類があります。このガーバーフォーマットは標準化されてはいるものの、ある程度の自由度が許されているので、書き出し/読み込み時の条件設定の不一致によって、正しいアートワークイメージが再現出来ない場合があります。このため相互間での正しいデータの受け渡しのためには、いくらかの予備知識が必要になります。 2)ガーバーデータリスト 図8-1に例を示します。 例では、上半分がガーバーデータの各ファイルの名称が列挙され、下の2行分がドリルデータのファイル名称(見本ではスルホールと素穴が別に)が列挙されています。ガーバーデータの各層というのは、パターン層だけでなく、シルクやレジストも各層の中に当然入ります。ここで自分が作りたい層構成があるのか確認できます。 ドリルデータはガーバーデータのフォーマットではなく、穴径毎のXY座標がテキストデータで羅列されているフォームですが、ファイル名を指示するために、このリストに列挙しています。ここでは、「ちゃんとドリルデータも出力されているな」という程度の確認になります。 ![]() 3)プリント基板要求仕様 図8-2に見本を示します。 アートワーク設計者がプリント基板工場に製造依頼するときの表紙部分になります。プリント基板工場では、これを基に工場内の作業指示書を作成していきます。表面処理については、次章で解説します。これはすべて、回路設計者も確認できる内容です。 ![]() 4)外形図・穴図 図8-3に例を示します。 外形寸法図の中に、穴径を示す記号(見本ではアルファベット)をそれぞれに該当するXY座標の位置に示している図面です。ここでは、非スルホールや特殊な穴があれば確認の対象になります。 ![]() 2:プリント基板製造から検査までの工程 ここからはプリント基板工場内のことになります。 前述のガーバーデータは、露光工程に使うフィルムを作成するのに使用します。ただし、フィルムという素材は環境の温度と湿度によって伸び縮みしますので、寸法の補正をCAM(Computer Aided Manufacturing)ツールにて行います。 図8-4で両面基板の製造工程の概略を示します。 これは、大半のプリント基板工場で採用されている、パネルメッキを使ったサブトラクティブ法と呼ばれている方法です。図のように、メッキとエッチングによってパターンを形成して行きます。 ![]() この図では省略していますが、各工程間にはメッキ液やエッチング液の中和工程、および水による洗浄工程を通りますので、プリント基板というのは極めてウェットな状況で作製されているのです。 4層基板は、上記の工程で内層パターン(2層3層)を形成させ、その後にプリプレグ(第7章で解説)と外層(1層4層)用の銅箔を重ね、プレス工程に入ります。その後再び図8-4の穴あけ工程から同じ工程を通って外層のパターンを形成して完成されます。6層以上の高多層基板も、これらの工程を繰り返して作製されます。 最近では、内層の品質向上の一貫として、内層パターンが形成された後に、AOI(Area Of Interest)検査を導入しているところが多くなっています。 その後は、フライングチェッカーなどの電気検査と最終外観検査を行ってOKであれば出荷となります。 電気検査とは、仕上がった基板の表面にあるパターンの端(主に部品挿入用スルホールランドやSMDのパッド)同志が導通しているかを、針を当て、針間同志を通電させ計測します。検査すべきパターンの端同志の情報は、ガーバーデータを使って、工場内のCAM工程で作製されます。そのデータに従って、針が目的の端子まで可動しては導通検査を繰り返すわけです。ですので、検査時間は結構かかりますしデータ量によって変化しますので、試作量程度なら良いですが、量産向きではありません。量産では全データを一度に通電検査ができる治具を作製して対応しますが、その治具作製費が必要になります。 最終外観検査では、目視によるチェック方法がほとんどですが、その時に使われる判定基準が限度見本と呼ばれるものです。その見本を図8-5に示します。 ![]() 今回はここまでとします。次回は第9回(第9章)「取り数・シートと価格について」を予定しています。 第8回(第8章)プリント基板の製造と検査 終わり ご意見、ご質問: <ahref="mailto:tetsuzan@accverinos.jp">tetsuzan@accverinos.co.jp (本書は、株式会社アキュベリノスの著作物です。許可なく掲載、転載等を行うことを禁止します。)
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| 開発こぼれ話 | 11:35 AM | comments (x) | trackback (x) | |